仮払金・前払金・立替金・前払費用の違いについてわかりやすく


みなさんこんにちは!

今回もわたくし個人的にはそれなりに難関だと思っているトピックです。

仮払金」「前払金」「立替金そして前払費用についてです。

これらはどれも事前にお金を支払っていて、あとで何かしらの修正を行うという点で共通しています。

では何が異なるのでしょうか?

いきなり結論からお伝えし、その後詳細を見て行きましょう。

結論

では、さっそくですが、結論です。

まず、仮払金は業務に必要と見込まれる支出ではあるもののその内容や金額が確定しない場合にとりあえず「仮」に計上するための資産勘定科目です。

後に費目や金額が明らかになった際に適切な科目に振り替えられます。

 

次に、前払金は商品を注文した際に支払った内金や手付金を処理する資産勘定科目です。

後に商品を受け取った時に仕入に変わるものです。

 

そして、立替金は従業員や取引先が負担すべき金額を代わりに立て替えた場合に、あとで受け取る権利として計上される資産勘定です。

後に立替金を回収した際に消えることになります。

 

最後に、前払費用は、当期中に支払い済みの費用に翌期の分が含まれている場合に、それを翌期の費用とするために貸借対照表上で繰り延べるための資産勘定です。

翌期に前払費用勘定の残高を費用勘定に振り替えることで残高が消えます。 

 

・・・と、いきなり4つ、まとめてしまいましたが、ここからひとつひとつ見ていくことにしましょう。

仮払金

まずは仮払金です。

仮払金」という言葉自体はふつうに違和感なく響くのですが、一回キチンと納得しないと誤解が長く続いたり、十分理解しないままやり過ごしてしまったりします。

この機会にぜひ、仮払金をしっかり理解しちゃいましょう。

仮払金とは、 内容や金額が確定しないものの、業務に必要と見込まれる場合に、一旦とりあえず「仮」で「払」っておくお「金」を処理する資産勘定です。

相手勘定や金額が不明の場合にとりあえず使う「仮」の勘定です。

簡単な事例とともに見たほうがわかりやすいかもしれませんね。

出張旅費の概算払い

従業員の出張にあたり、旅費の概算額¥50,000を現金で支払った。

仕訳

仮払金

50,000

現 金

50,000

 

概算払いの精算

出張中の従業員の旅費精算を行った。旅費の概算額として¥50,000を渡していたが、電車代が¥40,000、タクシー代が¥7,000であった。残額の¥3,000は現金で受け取った。なお、旅費(電車・タクシー代)は旅費交通費勘定で処理する。

仕訳

旅費交通費

現 金

47,000

3,000

仮払金

 

50,000

 

如何でしょうか?

お金は支払う。しかし、その内容や金額が今は未確定。

そんな時に「仮」でとりあえず「仮払金」勘定で計上しておくわけです。

 

前払金

では、次に前払金についてご説明します。

前払金とは、商品代金の前払い分です。商品を注文する時に、内金や手付金として支払ったお金です。商品を受け取ることで解消します。

 

では簡単な事例を見てみましょう。

 

内金・手付金の受け取り

仕入先に商品¥150,000を注文し、手付金¥30,000を現金で支払った。

仕訳

前払金

30,000

現 金

30,000

 

商品の受け取り

仕入先から商品¥150,000を受け取り、代金のうち¥30,000は注文時に支払った内金と相殺し、残額は掛けとした。

仕訳

仕 入

 

150,000

 

前払金

買掛金

30,000

120,000

商品を受け取るまでは支払ったお金は仕入ではなく前払金で処理します。

仕入になるのは商品を受け取った時です。

立替金

さて、続いて立替金です。

立替金従業員や取引先が負担すべき金額を代わりに立て替えた場合に計上される資産勘定です。

 

事例をふたつ見てみましょう。

まず最初の事例は取引先が負担すべき費用の立替払いです。

先方負担の発送費用の立替

得意先に商品¥100,000を掛けで売り上げた。なお、商品の発送費用(先方負担)¥5,000を運送会社に現金で立替払いし、掛代金とは区別して計上した。

仕訳

売掛金

立替金

100,000

5,000

売上

現金

100,000

5,000

 

立替金の回収

立替ていた得意先負担の運送費用を現金で回収した。

仕訳

現金

5,000

立替金

5,000

 

もう一つの事例が従業員が負担すべき費用の立替払いです。

従業員負担の保険料の立替

従業員が負担すべき生命保険料¥3,000を現金で立て替え払いした。

仕訳

立替金

3,000

現金

3,000

 

立替金の回収

従業員に給料¥200,000を支払った。その際、立替ていた生命保険料¥3,000を差し引き、残額を現金で支払った。

仕訳

給料

 

200,000

 

現金

立替金

197,000

3,000

これは給与支給時に立替金を差し引く形で回収したケースです。

 

実際のお金の動きとは異なりますが、立替金回収プロセスの理解のために以下のように考えることもできます。左右の現金勘定がネットされれば上記の仕訳と同じになります。

給料

現金

200,000

3,000

現金

立替金

200,000

3,000

 

前払費用

最後に前払費用についても見てみましょう。

前払費用は、当期に支払った費用に翌期の分が含まれている場合に、それを翌期の費用とするために貸借対照表上で繰り延べるための資産勘定です。

 

例を見てみましょう。

 

当期に¥12,000の火災保険料を支払ったが、この内、当期分の費用は¥3,000だけで、残りの¥9,000は翌期分であるため、繰り延べる。

仕訳

前払費用

9,000

支払保険料

9,000

前払費用はお金を支払うタイミングで計上する感情ではなく、通常は決算整理で登場しますね。支払い時に全て支払保険料勘定で全て当期の費用であるかのように処理したものを、決算整理で翌期に繰り延べるわけです。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

それぞれの勘定科目の意味について、ひとまずご理解いただけましたでしょうか?

もう一度まとめます。

仮払金は、内容未確定時の「仮」計上

前払金は、商品注文時の内金

立替金は、従業員や取引先が負担すべき金額の立て替え

前払費用は、翌期分費用の繰り延べ

と覚えてください。

 

関連投稿

前受収益については経過勘定の投稿でもご説明していますので必要に応じてご参照ください。

 

仮受金・前受金・預り金の違いについてはこちら↓

 

預り金についてさらに詳しい説明はこちらをご参照ください。

よろしくお願いします。

 

 

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コメント

  1. たくろう より:

    前払金も前払費用も将来払う金額なのになぜ違うんですか?
    前払金は商品発注の為だけに使うものでそれ以外は前払費用にする決まりですか?
    違いが分かりません。
    教えてください。

    1. fujiisusumu より:

      とても重要なポイントについてご質問頂きありがとうございます。

      これについては企業会計原則注解 [注5] に以下の説明があります:

      「 前払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の費用となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の資産の部に計上しなければならない。また、前払費用は、かかる役務提供契約以外の契約等による前払金とは区別しなければならない。」

      つまり、「一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合」であって、「時間の経過とともに次期以降の費用となるもの」が「前払費用」の対象です。

      例えば、借入金の利息を前払した場合、お金を貸し続けてくれる対価として、日割りなり月割りで時間の経過と共に利息は発生します。
      こういう場合、前払した額のうち、当期の期間に相当するものは当期の費用、来期の期間に相当する分は来期の費用とします。来期分は当期の損益計算書には含めず、貸借対照表に前払利息(前払費用)として計上します。

      前払利息 100 支払利息 100

      来期には

      支払利息 100 前払利息 100

      という仕訳を切って損益計算書に計上されます。

      時間の経過と共に発生する費用の例は利息の他に支払家賃があります。
      もし向こう1年分の家賃を前払いしたが、当期分は3ヶ月分のみで9ヶ月分は来期分である場合、一旦支払家賃として計上しました額のうち9ヶ月分は前払家賃(前払費用)に振り替える必要があります。

      その他の例としてはリース料、地代、保険料などもあります。

      このような、時間の経過とともに発生する継続役務提供契約に基づくもの以外の契約による場合で、役務提供や物品の引き渡しが行われる以前に支払った代金の前払は「前払金」になります。

      商品を仕入れる際に、商品代金の一部を先に支払うことがあります。このお金を「手付金」または「内金」と言います。これらは「前払金」として扱われる代表例です。企業会計原則注解に書かれているように、これら商品の仕入れ代金の前払は時間の経過とともに発生する種類のものでは無いですから「前払費用」にはならないですね。

      利息・地代・家賃・保険料・リース料が継続的役務提供の代表例です。そうした継続的役務提供契約以外の前払いが前払金になりますが、その代表例としては商品仕入れの手付金・内金です。

      少しでも理解の助けになればと思い書きましたが、いかがでしょうか?

      他の方も同様の疑問を抱く方がいると思いますのでこの内容を別途投稿させていただきますね。

      ご質問いただきこちらも勉強になります。ありがとうございます。

    2. fujiisusumu より:

      たくろう様、

      先程の返信に追加させていただきます。
      >前払金も前払費用も将来払う金額なのになぜ違うんですか?
      と書いて下さいましたが、念のため確認を兼ねてご説明させていただきますと、いずれも「将来払う金額」ではなく、現在又は過去に払った金額です。
      前払金は通常支払った時に(つまりほぼ現在)計上します。また、前払費用は通常、期中に(つまり過去に)費用として払ったものを決算整理で前払費用に振り替えます。

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