商品有高帳~移動平均法・先入先出法をわかりやすく解説


みなさんこんにちは!

今日は商品有高帳について見て行きましょう。

そして商品の払出原価算出方法である移動平均法・先入先出法についても見て行きます。

 

まず、商品有高帳とはこんな感じの帳簿です。

ご覧いただいた通り、商品有高帳には受入欄と払出欄があり、一番右に残高欄があります。

商品ごとに、受入や払出の数量・単価をメモして残高としての数量・単価を把握します。

 

仕入れた時には受入欄に数と単価を書きますよね。

そして売り上げた時には払出欄に数と単価を書きます。

 

ここで、売り上げた時に記帳する単価ってどんな単価でしょうか?

 

売却単価でしょうか?

 

いいえ、そうではありません。

 

商品有高帳では売価ではなく常に原価をベースに記帳します。

払出欄には売却した数とその原価を記入します。

 

さてさて、いきなり難しいですよね?

 

じゃあ、原価って何でしょうか?

 

簡単な設例を見てみましょう:

最初の10個は単価100円で仕入れました。

次の10個は単価200円で仕入れました。

そのあと、10個売り上げたとしましょう。

そしたら、売り上げた商品の仕入原価っていくらですか?

 

いろんな考え方ができますよね。

A) 最初の仕入れ分と次の仕入れ分が同じカゴに混ざっていて、平均的に払い出されると考えれば、単価100円と単価200円の平均と考えることができますよね。

また、

B) 最初に買った商品から払い出すと仮定すれば最初の仕入れの単価100円が適用されることになります。

そうなんです。

払い出し原価の単価をどう決めるか、計算の前提を決めなければならないのです。

 

上記A)の考え方に基づく計算方法を「移動平均法」、B)の考え方に基づく計算方法を「先入先出法」といいます。

 

ではまず、A) 移動平均法に基づいて払い出し単価を計算してみましょう。

 

移動平均法

次の商品有高帳をご覧ください。

この例ではまず、前月からの繰越分が10個X@200円=2,000円あります。これも受入欄に記入します。

そして7日に20個X@230円=4,600円を仕入れました。

すると、この時点の残高は10個+20個=30個ありますが、その単価は移動平均法によると@220円となります。

表中の 220円/個=(前月繰越2,000円+7日仕入4,600円)÷(前月繰越10個+7日仕入20個)

次に、15日に20個を売り上げたとします。この時の払出単価はいくらでしょうか?

移動平均法によれば、払出直前の残高の単価が使われることになります。

つまり、①220円です。

売り上げた後の残高は30個-20個=10個です。そしてその単価はそのまま①の220円です。

続いて21日に15個X@240円=3,600円で仕入れました。

これによって残高個数は10個+15個=25個、金額は直前の残高2,200円+21日の仕入れ分3,600円=5,800円、単価はそれらの割り算で5,800円÷25個=@232円となります。

この後は新規受け入れがない限り、売り上げや繰越商品の単価にこの@232円が使われます。

 

仕入戻し・売上戻り

では次に、仕入戻し売上戻りがあるケースを見て行きます。

1)仕入戻しや売上戻りを以下のように記入する方法も考えられるかもしれません。

つまり上記は、仕入戻し受入のマイナスとして記帳し、売上戻り払出のマイナスとして記帳する方法です。

この方法の良いところは、仕入データは受け入れ欄に集約され、売上原価データは払い出し欄に集約されるところです。

しかし、

2)商品・モノの動きそのものに着目して「受入」・「払出」という観点を重視した場合には、仕入戻しは「払出」、売上戻りは「受入」と扱う考えも支持されるでしょう。

つまり以下の様な記入になります。

実際、過去の日商簿記3級試験を見ても、②の考えに基づいた出題がなされています。(参考過去問題:第142回、第151回)

したがって、日商簿記検定を受ける際には、その時々の問題文を注意深く読んで判断する必要がありますが、一旦は2)で勉強を進めて良いと思います。

 

先入先出法

では続いて、B)先入先出法について見ていきます。

先入先出法は最初に受け入れたものから先に払い出されるという仮定に基づいて払い出し単価を計算する方法です。

ちなみに、First-In, First-Outを略してFIFO(ファイフォ)と言ったりもします。

この先入先出法を適用する時には、仕入れた順番ごとに数と単価をメモしておかなければなりません。従って、残高は仕入れた順番と単価ごとに数行に分けて表記する必要があります。これに伴い、払出欄も払出単価ごとに行を分けて書くことになります。

以下の様な感じになります。

過去の日商3級問題を見る限り、複雑なケースはあまり出題されていませんが、移動平均法と先入先出法、両方の考え方の理解度を確認する出題はありましたので計算の考え方はおさえておいてくださいね。

(参考過去問題:第151回)

 

注意点とまとめ

商品有高帳の問題を回答する際には、以下の諸点に注意してくださいね。

次月繰越額を求めさせるのか、売上原価を求めさせるのか確認する。

売上原価を求める場合には、払出欄を単純に合計するだけではなく、払出欄の仕入戻しや受入欄の売上戻りも計算上考慮すべき場合がある。

 

では最後に、定義を確認してまとめとします。

 

商品有高帳

商品有高帳とは、商品の種類ごとに受入や払出および残高の数・単価・金額を仕入原価で把握するための補助簿です。

なお、商品有高帳は受け入れ、払い出し、そして残高のすべてを、売価ではなく、常に仕入原価で記入するところがポイントです。

 

移動平均法

移動平均法とは、商品を受け入れる都度、平均単価・平均原価を計算し、この平均原価をもって残高や払出単価を計算する方法のことです。

 

先入先出法

先入先出法とは、最初に受け入れた商品から先に払い出されるという仮定に基づいて残高や払出単価を計算する方法のことです。

 

如何でしょうか?

じっくり取り組めば得点しやすい問題ですが、勘違いや計算間違いをしない様に十分注意を払って回答してくださいね。

 

それでは今回の説明はこの辺にしたいと思います。

 

お疲れ様でした!

 

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