前回の投稿で貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)を作成しました。
これらの表を作成するために試算表やT勘定、仕訳といった手続きが存在します。
では、
貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)を作成するとどんな良い事があるのでしょうか?
これを考え「こんな良い事がある」というのを見つける事は、貴方が簿記をやる意味に直結します。あなたの提供する価値に関わってきますし、その対価としてのお給料をもらう場合にはその意味合いも理解できます。さらには、貴方の簿記がどう社会貢献に繋がるか、ということが理解できます。
貸借対照表の比較
では貸借対照表のサンプルを見てみましょう。
<サンプル1>
これを見て、どう思いますか?
貸借対照表から何が読み取れますか?
この会社の財政状態は良いですか?悪いですか?
持っている資産100のうち、30%は他人資本で70%が自己資本だということは、とりあえず見て取れます。
では、もう一つのBSと比較してみましょう。
<サンプル2>
これは他の会社のBSです。
持っている資産より負債の方が大きく、債務超過の状態になっていますね。
細かい事は分かりませんが、サンプル1に比べて財政状態は悪そうですね。
貴方がどちらかにお金を貸すとしたらどっちに貸した方がちゃんと返してもらえそうでしょうか?
サンプル1の方が安全そうですよね。
貸借対照表があるお陰でそんな事が解るわけです。
では事例を見てみましょう。
<A社>
<B社>
A社とB社、どんな違いがありますか?
どちらも借入金が70、自己資本が30です。
資産の中身が違いますね。
A社は「現金」、B社は「貸付金」です。
両者に質問出来るとしたらどんな事を質問しますか?
例えばこんな質問はどうでしょう?
「借入金の返済期日はいつですか?」
A社、B社ともに答えはこうでした。
「借入金の返済期日は1ヶ月後です」
貴方の心で何かざわめくものはありますか?
「その借入金、きちんと返済出来るのだろうか?」
と、気になってきませんか?
推測ですが、
A社は他に絶対に払わなければならない支払がない限り、多分、手持ちの現金で借入金を返済出来るでしょう。
でも、
B社は貸付金を返してもらえる期日が1ヶ月後より後だったら、このままでは借入金を返すお金が無い事になります。
確認したくなりますよね?
ではB社に質問してみましょう。
あなた「貸付金が返ってくる期日はいつですか?」
B社「3年後です」
あなた「1ヶ月後に返す借入金の返済資金はどう準備されるご予定ですか?」
B社「他の銀行から新たにお金を借りて、そのお金で返そうと思っています」
あなた「貸してくれそうな銀行はあるのですか?」
B社「今のところ断られ続けていますが、引き続き交渉を続けます」
ん~、、、。
貴方は手帳にこう記すでしょう。
「B社、ヤバめ・・・」
こんなメモも、貴方が貸借対照表を読めるから書けた貴重なメモです。
証券アナリストさんはこの様な分析もしています。
つい数日前までT勘定や仕訳を学んでいたのに、今日はもう財務分析(Financial Analysis)ですね。
おめでとうございます!
本当に凄いです。
それもこれも、投稿の長い文章を辛抱強くお読みくださったからこそです。
損益計算書の比較
では次に、損益計算書も見てみましょう。
C社の損益計算書はこうです。
一方、D社の損益計算書はこうです。
D社の方が利益が大きくて、良さそうな気がしますね。
では、それぞれの会社の去年の損益計算書も確認してみましょう。
C社・・・今年と同じ
D社・・・収益より費用の方が大きいので、結果は利益ではなく損失
D社は今年に比べて悪いですね。
じゃあ何で今年は急に良くなったんでしょうか?
今年と去年の損益計算書をもう少し細かく見てみましょう。
D社(去年)
D社(今年)
今年良くなったのは、不動産売却益70のお陰ですね。
よくよく聞いてみると、長年持っていた不動産を売却したことでたまたま儲けたそうです。もはや手元に売れる不動産は無いので、一時的な利益です。
これだと来年良くなる保証はありませんので不安定ですね。
であれば、C社の方が比較的良い状態で安定していることが解ってきます。
こんな判断も財務諸表の見方がわかっているからできるわけです。
簿記の意義
ちなみに、簿記3級でこのような財務分析を行う問題は出ません。
しかし、
このようなことを考えてみると、
「財務諸表がこのような関心を持って読まれるのか~」
ということがわかってきて、
簿記をやる意味がより明確にわかりますよね?
- 税金を計算するために利益を計算する必要があります。
- お金を貸す人(債権者)は借り手企業の財政状態や経営成績が気になります。
- 従業員も自社の安定性や収益性に関心があります。
- 株主も経営成績や財政状態の行方を注視しています。
- 取引相手も同様に財政状態を気にします。お金を前払いしたが経営が行き詰まって来るべき商品が届かない、なんてことになってほしく無いですので。
- 会社の経営者も自社の状態を常に数字で把握しなければなりません。
多くの関係者が単年のB/S・P/Lを見たり、過去のB/S・P/Lとの変化・推移を分析したり、同業他社と比較したりするのです。
もしもB/SやP/Lが無かったら・・・
もし、B/SやP/Lが無かったらどうなりますか?
- 税金が正しく申告されないケースが増えたら税率を上げなければならなくなるかもしれません。
- 銀行は貸して大丈夫か確信が持てないため倒産リスクに備えて貸付金利を上げたり、貸し渋ったりするかもしれません。
- 従業員は給料が払われると思って就職したのに倒産してしまって期待した給料も退職金ももらえなかった、なんてことになるかもしれません。
- 株主は投資の不安要素が増すので安くなければ手が出せなくなり、株式相場全体が下がるかもしれません。
- 取引相手も不安が拡大して代金後払いの信用取引を控えるようになるので取引規模が縮小するでしょう。
- 経営者も自社の活動を数字で把握できないので目をつぶって車を運転するような感じで会社経営をしなければならず、大胆な投資を控えるようになるでしょう。
- こんな風に、もし簿記が無かったら、経済活動に縮小のバイアスがかかります。
大変ですよね。
透明性がなくなるからです。
簿記は経営状況の透明性を高め、経済取引を活発化させ、経済の発展に寄与します。
あなたが簿記をやることは経済の成長に貢献することにつながるのです。
マクロで見るとこんな感じです。
もちろん、ミクロな視野で見ればもっと違う見方もできます。
- 自分の会社の経理が自分でできれば税理士さんに頼むお仕事も減ってお金が節約できるかもしれません。
- 簿記ができれば会社への就職が有利に働くかもしれません。
- 簿記3級に合格できたら、さらに難しい資格への準備ができて、それに合格したらお給料が上がるかもしれません。
そういった意味というのも、もちろんありますよね。
そんなこんなで、簿記をやる意味、特に社会的意義を力説したくて今回の投稿を書きました。
というわけで、みなさん、簿記の勉強、頑張って行きましょう!
(追伸)簿記をやる意味を考えるついでに財務分析も体験いただくことができました。
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