工業簿記でいまいちスッキリしない所があるとすればどこですか?
たとえば、
全部実際個別原価計算と直接実際総合原価計算の違いとかって解りますか?
ある程度こんがらがったままでも問題は解けるかもしれません。
でも、どうもしっくりこなくないですか?
だって、「全部」の対義語は何ですか?
普通に考えたら「一部」ですよね?
でも、原価計算の世界では、
「全部」に対応する言葉は「直接」なんです。
「直接」の反対は「間接」でしょ?って思うのですが。。。
まあ、中身を少し掘り下げれば解るんですけどね。
そういうわけで言葉が色々と並びますので、今回は一度スッキリわかりやすく整理したいと思います。
全部原価計算と直接原価計算
まず、全部原価計算と直接原価計算の違いから行きます。
これは、製品勘定に集計する原価の範囲の違いに基づく区分です。
全部原価計算は変動費のみならず、固定費も集計するのに対し、
直接原価計算は変動費だけを集計します。
なので、頭の中をスッキリ整理するために、「直接原価計算」は「変動原価計算」だと考えていただいて問題ありません。
ちなみに、原価計算の実践規範である「原価計算基準」には、「全部原価」と「部分原価」が対比され、次のように書かれています。
「部分原価は、計算目的によって各種のものを計算することができるが、最も重要な部分原価は、変動直接費および変動間接費のみを集計した直接原価(変動原価)である。」
(出典:「原価計算基準」四 原価の諸概念(三)全部原価と部分原価)
というわけで、全部原価計算と個別原価計算の違いは製品への集計原価の範囲に固定費が含まれるか否か、ということになります。
個別原価計算と総合原価計算
さて、次は個別原価計算と総合原価計算との違いについてです。
こちらは生産形態の違いに基づく区分です。
工業簿記・原価計算を勉強する上では次のようにイメージしてください。
「個別」は個別生産
「総合」は大量生産
個別原価計算は個別受注生産に適しています。個別受注生産では各注文ごとに製造指図書というものを用意します。その注文番号(製造指図書番号)ごとに直接かかった材料消費量や作業時間、機械稼動時間などを管理します。その情報に基づいて原価を集計していくのです。
原価計算基準にはこう書かれています。
「個別原価計算は、種類を異にする製品を個別的に生産する生産形態に適用する。
個別原価計算にあたっては、特定製造指図書について個別的に直接費および間接費を集計し、製品原価は、これを当該指図書に含まれる製品の生産完了時に算定する。」
(出典:「原価計算基準」三一 個別原価計算)
一方、
総合原価計算は需要量を見込んで大量に生産する形態に適しています。こういった携帯では、個々の製品の原価は全体でかかった原価を製品数量で割って算出されるイメージです。
原価計算基準にはこう書かれています。
「単純総合原価計算は、同種製品を反復連続的に生産する生産形態に適用する。単純総合原価計算に当たっては、一原価計算期間(以下これを「一期間」という。)に発生したすべての原価要素を集計して当期製造費用を求め、これに期首仕掛品原価を加え、この合計額(以下これを「総製造費用」という。)を、完成品と期末仕掛品とに分割計算することにより、完成品総合原価を計算し、これを製品単位に均分して単位原価を計算する。」
(出典:「原価計算基準」二一 単純総合原価計算)
ちょっと引用が長かったかもしれませんが、ポイントは「均分」という言葉です。
個別原価計算は基本的に「均分」という考え方ではありません。
この点に着目して覚えるなら、
「個別」は個別計算
「総合」は均分計算
と覚えても良いでしょう。
実際原価計算と標準原価計算
こちらは、財貨の消費量および価格の算定基準の違いに基づく区分です。
前回の投稿
では、実際原価計算と標準原価計算との違いについてご説明させていただきました。
その要約はこうです。
価格はどちらも予定を用いることがあるのですが、決定的な違いは消費量について実際の消費量を使うか標準(目標)消費量を使うか、という点です。
まとめ
集計範囲、生産形態、消費量+価格、
これら3つの基準で原価計算の方法が分かれています。
①集計範囲 → 固定・変動全部か変動だけか → 全部・直接
②生産形態 → 個別生産か大量生産か → 個別・総合
③消費量 → 実際か標準か → 実際・標準
目的によって色々な方法を各社で導入するわけですが、典型的な種類としてこのようなものが試験で出ますので、言葉の意味を理解しておいていただければと思います。
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サポーター講師:藤井すすむ
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