実際原価と標準原価の違い 予定価格との関係 3ステップ解説

みなさんこんにちは!

今日は臨時で日商簿記2級の工業簿記原価計算に関する投稿です。

簿記3級受験の方はスキップいただいて構わない内容です。

が、もし2級の世界、工業簿記や原価計算の世界をのぞいてみたい方はご参考までにどうぞ。

 

というわけで今日のトピックは、

「実際原価」と「標準原価」の違い

そして、

それらと「予定価格」との関係

についてです。

 

では早速ご説明させていただきます。

いきなりポイントからいきます。

 

ポイント

「実際原価」と「標準原価」とは原価の「消費量」および「価格」の算定基準が異なります。

なるべくシンプルな説明から3ステップで段階を踏みながら詳細な説明に移行していきます。

 

ステップ1

日商簿記2級の勉強をするにあたり必要と思われる範囲で、あえて超シンプルに説明するとこうなります。

 

  財貨の消費量 財貨の価格
実際原価 実際 実際 or 予想
標準原価 目標 予想

 

実際原価は実際の消費量実際の価格または予想の価格で計算する原価です。

標準原価は目標となる消費量予想の価格で計算する原価です。 

ここで、

予想の価格予定価格といいます。

また、

目標となる消費量標準消費量といいます。

それらを加味してまとめ直すとこうなります。

 

原価の区分 財貨の消費量 財貨の価格
実際原価 実際 実際 or 予定(予想)
標準原価 標準(目標) 予定(予想)

 

 

ステップ2

「実際原価」と「標準原価」の正式な定義については「原価計算基準」に示されていますので、そこでの記述にもう少し忠実な形で要約すると次の様になります。

「実際原価」とは、

財貨の消費量を「実際消費量」で計算した原価

です。

 価格については、「実際の取得価格」の場合も「予定価格」の場合もあります。

価格を「予定価格」で計算しても、消費量が「実際消費量」である限り、「実際原価」です。

ここで、

「予定価格」とは、

将来の一定期間における実際の取得価格を予想することによって定めた価格

のことです。

 

次に、

「標準原価」とは、

財貨の「消費量」を「標準消費量」で計算し、かつ、価格を「予定価格」又は「正常価格」で計算した原価

です。

「標準消費量」とは、科学的、統計的調査に基づいて「能率の尺度」となるように予定されたもので、その標準が適用される期間において達成されるべき「原価の目標」を意味します。

単なる「予想」ではなく「目標」の意味を含んでいるわけです。

 

 

なお、ステップ1では「正常価格」に関する記述をあえて省略しました。「予定価格」又は「正常価格」を「標準価格」と言い換えても勉強上支障は無いと思います。問題文や説明文では「標準価格」と示される場合も多く、逆に「正常価格」と言う用語の出番は少ないようです。

 

 

ステップ3

最終的には「原価計算基準」の記述が「正」ですので、それを読み込むことになります。以下、ご参考までに引用させていただきます。

出典:「原価計算基準」

第一章 原価計算の目的と原価計算の一般的基準

四 原価の諸概念

(一)  実際原価と標準原価

原価は、その消費量および価格の算定基準を異にするにしたがって、実際原価と標準原価とに区別される。

1  実際原価とは、財貨の実際消費量をもって計算した原価をいう。ただし、その実際消費量は、経営の正常な状態を前提とするものであり、したがって、異常な状態を原因とする異常な消費量は、実際原価の計算においてもこれを実際消費量と解さないものとする。

 実際原価は、厳密には実際の取得価格をもって計算した原価の実際発生額であるが、原価を予定価格等をもって計算しても、消費量を実際によって計算する限り、それは実際原価の計算である。ここに予定価格とは、将来の一定期間における実際の取得価格を予想することによって定めた価格をいう。

2  標準原価とは、財貨の消費量を科学的、統計的調査に基づいて能率の尺度となるように予定し、かつ、予定価格又は正常価格をもって計算した原価をいう。この場合、能率の尺度としての標準とは、その標準が適用される期間において達成されるべき原価の目標を意味する。

 標準原価計算制度において用いられる標準原価は、現実的標準原価又は正常原価である。

 現実的標準原価とは、良好な能率のもとにおいて、その達成が期待されうる標準原価をいい、通常生ずると認められる程度の減損、仕損、遊休時間等の余裕率を含む原価であり、かつ、比較的短期における予定操業度および予定価格を前提として決定され、これら諸条件の変化に伴い、しばしば改訂される標準原価である。現実的標準原価は、原価管理に最も適するのみでなく、たな卸資産価額の算定および予算の編成のためにも用いられる。

 正常原価とは、経営における異常な状態を排除し、経営活動に関する比較的長期にわたる過去の実際数値を統計的に平準化し、これに将来にすう勢を加味した正常能率、正常操業度および正常価格に基づいて決定される原価をいう。正常原価は、経済状態の安定している場合に、たな卸資産価額の算定のために最も適するのみでなく、原価管理のための標準としても用いられる。

 標準原価として、実務上予定原価が意味される場合がある。予定原価とは、将来における財貨の予定消費量と予定価格とをもって計算した原価をいう。予定原価は、予算の編成に適するのみでなく、原価管理およびたな卸資産価額の算定のためにも用いられる。

 原価管理のために時として理想標準原価が用いられることがあるが、かかる標準原価は、この基準にいう制度としての標準原価ではない。理想標準原価とは、技術的に達成可能な最大操業度のもとにおいて、最高能率を表わす最低の原価をいい、財貨の消費における減損、仕損、遊休時間等に対する余裕率を許容しない理想的水準における標準原価である。

 

おわりに

いかがでしたでしょうか?

日商簿記2級の工業簿記を勉強するにあたってはまずはステップ1で示したまとめを頭に入れておけば対応できると思います。

ステップ2とステップ3はその補足説明としてご参照ください。

 

なお、

このブログでは、初めて簿記に触れる方が簿記を理解し、脱落することなく日商簿記3級に合格できるレベルまで知識・能力を身につけていただくことを目標としてきました。

しかし、実際には日商簿記2級を受験する方にも多くお読みいただいています。

また、自分としても、簿記3級にとどまらず、簿記2級までわかりやすくご説明していきたいという目標もあります。

そこで、質問を受けたトピックや、特に気になったトピックやごについて、簿記2級に関する投稿も折に触れしていこうと思います。

 

よろしくお願いします。

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サポーター講師:藤井すすむ

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